大学職員の仕事には、教務課や奨学金支援課などで学生と接する学生対応があります。
学生と関わることができるのが大学職員の大きな魅力ですが、大学職員はどのようなことを意識して学生と接しているのでしょうか。
- 学生とどんな話をしているのだろう?
- 学生対応で気をつけることは何だろう?
- 窓口に来る学生ってどんな学生?
学生と関わることが多い教務課ですが、教務課にいる大学職員がどのような仕事をしているのか実はあまり知られていません。
大学職員の志望動機で「学生と関わりたい」ということを理由にした場合、大学職員が学生と関わってどのような仕事をしているのか理解しておきたいところです。
この記事では、現役の大学職員が学生と関わる仕事について、具体的なケース3選を用いて紹介します。
大学職員になったつもりで自分ならどう行動するか考えてみましょう。
大学職員が学生対応をするときに絶対に気をつけなければいけないポイントがあるので、仕事内容と一緒に理解を深めてください。
- 大学職員の仕事内容がわかる
- 学生と接するときのポイントがわかる
- 大学職員になったつもりでケースが学べる
大学職員が学生対応で気をつける3つのこと

大学職員が学生対応をする際は、つぎの3つを意識しています。
- 学生間の不平等が生じないよう対応をする
- 学生の様子を細かく確認する
- 個人情報の保護を徹底する
大学職員は事務作業だけではなく、学生と接する機会がとにかく多いのでどんなことに気をつけながらコミュニケーションを取っているのか順番に解説します。
学生対応では「学生間の不平等」が生じないことを意識する
大学職員が学生と接する機会が多いのが、窓口での業務です。
学生は大学の窓口に申請書や届け出など、さまざまな手続きや書類を提出するためにやってきます。
大学では毎年、すべての学生にアンケートを実施して「学生の声」を拾っていく仕組みがあります。
学生アンケートの大学職員の対応で不満に感じた項目では「窓口で融通してくれなかった」という意見が学生から寄せられることがあります。
「融通してくれない」の原因はいろいろありますが、期限のある申請手続きなどの対応では、「融通してあげられない」背景があることが理由になっています。
具体的にケーススタディで一緒に考えてみましょう。

つぎの場合、自分ならどう対応するか考えてみて!


ケース:提出期限に遅れて学生が申請にきた
学生と関わる部署の業務には「締め切りを設けた申請」についての対応があります。
- 奨学金申請
- レポート提出
- 学内アルバイト募集
- 成績への異議申し立て
- 交換留学の申請
学生と接する部署で仕事をしていると、「すみません!期日を過ぎてしまいましたが受け付けてほしいです」と窓口に駆け込んでくる学生がいます。
こんな時、あなたならどのように対応しますか?
2人の学生を例にして考えてみましょう。
遅れて提出してきた学生Aさん
「お知らせを見ていなくて昨夜、確認しました!だから提出を受理してください!
え?受理できない?僕は成績優秀でGPA3.98ですよ?僕の提出を受けないなんて大学にとって不利益じゃないんですか!!」
遅れて提出してきた学生Bさん
「お知らせは見ていたんですけど、就職活動のエントリーシート作成にすっかり時間を使ってしまって間に合いませんでした。就職活動もなかなか思うように進まず、気分が落ち込みがちなんです…。一生懸命、書類を作ってきたので受け取ってもらえませんか?」
今回、2人の学生を具体例に紹介しましたが、どちらもよくあるケースです。
「成績や優秀な学生なんだから申請を受け付けろ!」という高圧的な態度をとる学生Aさんに対しては、一方的な理由で期日後の申請が受け付けられることはありません。
しかし、「上手くいかない就職活動を頑張っていて申請できなかった」学生Bさんについてはどうでしょうか。
目の前で、困っている学生がいたら、助けてあげたくなりますよね。
自分も就職活動に苦労した経験のある方なら、なおさら目の前の学生Bさんを放ってはおけないのではないでしょうか。



Cさんのような学生がいることを忘れてはいけないよ!
では、次に学生Cさんの存在を考えてみましょう。
提出を忘れていたことに気づいて諦めたCさん
「あっ!?提出期限が昨日までだった…。昨日は急な催事があって申請するつもりができなかったな。提出期間は1週間もあったし、もっと早めに提出しなかった自分が悪い…。今回の提出は諦めよう…。」
いかがでしょうか?
このように期限が過ぎてしまったことを受け入れて、窓口に来なかった学生がいることを忘れてはいけません。
大学職員は、目の前の困っている学生をみると助けてあげたくなるものです。
しかし、申請や提出物は提出期限を過ぎたために、諦めて申請を我慢している学生もいるため、窓口にきた学生だけが得をするような状況を作ることはできません。
- 教務課の窓口でゴネたら提出を認めてもらえた
- 普段から大学職員さんと仲良くしているから期限後でも提出を認めてもらえた
- ダメもとでも長時間粘ったら根負けして提出を認めてもらえた
学生によって対応が変わってしまう大学では、学生たちが安心してキャンパスライフを送ることができません。
大学職員は学生と接する時でさえ、いつも判断の連続です。
専任の大学職員は、派遣職員やパート職員から相談を受けたり、学生から相談を受けたりするため、判断と決断をする立場にあります。
次に、大学職員が仕事で意識していることについてみていきましょう。
大学職員が学生と関わる中で心がけること
大学職員は学生と関わる部署で勤務をしていると、毎日のようにあらゆる学生から相談を受けます。
そんな中で、「できる・できない」の判断を迫られることになりますが、どのような基準で判断をしていけば良いのでしょうか。
それは、「その対応はほかの学生にも説明ができるか?」という判断軸を持つことです。
目の前にいる学生が困っていたら、当然、何とかして助けてあげたくなります。
ですが、これからしようと思う「目の前にいる学生への対応」について、別の学生にも、「なぜ、このような対応を取ったのか」を説明できなければ、あなたの対応は良いものとは言えません。
ほかの学生に対しても、正々堂々と胸を張って説明ができる対応というのは、透明性のある対応です。



規程や募集要項に沿って判断しているわ!
大学職員によって対応が変わらないように、大学にはルールを定めた規程や募集要項があります。
大学としてどのような対応ができるのかを明確にするために、これらのルールを学生にも事前に周知しています。
ただし、目の前の困っている学生に対して、「できない」というひとつ返事で終わらせるのであれば、AIやロボットの対応と変わりません。
困っている学生の話を聞き、根本にある問題の解決に向けて一緒に考える、あるいは「できない」の近くにある「これならできる」を提示して学生自身に選択の機会を与えることが大学職員の仕事です。



「できないこと」も角度を変えると「できる」が見えてくる!
残念な大学職員の特徴3選


学生対応が難しい理由として「マニュアルとおりの対応ができない」場合があることです。
学生ひとりひとりの抱えている背景や状況は異なるので、話をていねいに聞きながら適切に対応していく必要があります。
多くの大学で実施している学生アンケートを見ていると
- 教務課の窓口での対応が冷たい
- 対応した職員が高圧的だった
という意見を目にすることがあります。
なぜ、このような回答があったのかは、対応した職員と対応を受けた学生の両者からヒアリングをしてみなければわかりませんが、もし、次のような大学職員がいるのであれば残念な大学職員の典型例です。
- すべて担当者が判断すると勘違いしている
- 「できない」の一点張りで説明がない
- 何でもかんでもOKしてしまう
ダメな大学職員の例1:すべて担当者が判断すると勘違いしている
大学職員には、それぞれの職場で担当業務があります。
大学にある部署では、それぞれ担当業務を明確にして、大学が社会から求められる責任を十分に果たすために仕事をしています。
しかし、「その業務の担当=すべての決定権は自分にある」という勘違いがある場合は注意が必要です。
大学職員が業務で行う判断というのは「大学の役割を果たすため」に行うものであって、ひとりの大学職員の気分や感情で決めるべきものではありません。
規程や募集要項など、根拠に基づいて判断するべきです。
ダメな大学職員の例2:「できない」の一点張り
記事の冒頭で紹介した「期日に遅れた学生のケース」のように、大学職員には「制度上できない」ということを学生に説明しなくてはいけないときがあります。
「制度上できない」という時に、学生の声に耳を傾けず「できない」と一点張りの説明をするだけではなく、なぜできないのか理由をしっかりと説明し、学生自身に理解してもらうための説明をする必要があります。
「できない」というだけでなく、学生自身が理解できるような説明を常に心掛ける必要があります。



考えることを辞めたらダメだよね!
目の前の学生が求めていることは、理不尽な要求なのか、それとも特別な事情があるのか。
しっかりと学生の声に耳を傾け、現状と乖離した制度になっていないか?など、常に考えを巡らせる必要があります。
思考停止の「できない」一点張り状態では、AIやロボットが対応するのと変わらない。
できない理由を学生に伝える時には子ども扱いをすすのではなく、ひとりの大人として接することが大切です。
本当にできない時は、はっきりと「できない」と伝えることで学生も自分で理解して次の行動につなげることができます。
ダメな大学職員の例3:すべてにOKしてしまう
大学職員は仕事をするうえで、人と人の間で話を聞いたり、交渉したりすることが多くあります。
そのため、日常的に学生や教員からさまざまなお願いをされたり、ご意見をもらうことになります。
お願いごとやご意見を受けたことがすべて実現できれば良いですが、限られた予算やリソースの中では「できない」こともあります。
教員に対してできない理由を説明する場合、お互いの背景や前提が異なればなかなか理解を得られず、説明に骨が折れることもあります。
そのため、「ノーと言えば攻撃されるから何も考えずにすべてイエス」となっている大学職員がいる場合は要注意です。
先ほどの「できない一点張り」とは、逆の意味で思考停止の状態です。
イエスマンでいれば、その大学職員自体は一時的に楽ができるかもしれませんが、大学の対応としてはどうでしょうか?
大学として対応できないことにもイエスと言ってしまうと、「あの人はイエスと言ってくれたのに…」と人によって回答が異なる事態を招き、同じ部署で働く同僚にも迷惑がかかります。
大学職員こそ人間的な魅力を持とう


大学職員は人の間にたって物事を前に進めることが仕事です。
大学職員が仕事で関わる人は、多様な背景を抱える学生や、その研究分野の第一人者と言われるような研究者である教員です。
さまざまな人々と関わりながら、大学職員が仕事を進めるために必要なものとはなんでしょうか?
答えは、人として尊敬され周囲からの信頼を得ることです。
もっと、分かりやすく言うならば、人間的な魅力(人間力)が必要ということです。
もし、あなたが学生だとして、目の前にいる大学職員が知識もなく、円滑なコミュニケーションが難しい人物ならば、尊敬の念をもって接することができるでしょうか?
教員と仕事をする時に、研究分野ではとても及ばずとも、それ以外であなただけの武器があれば、教員から信頼をしてもらうことができます。
大学全体のことを知っていたり、学内の意思決定フローを把握して、ポイントを押さえた交渉ができれば、大学職員は教員からの支持を集めることになります。
主体的に学び続けている大学職員が多い
まわりの大学職員を見回してみると、日頃から研究を行う教員や資格取得のために勉強に励む学生と接する機会が多い職場のため、大学職員も勉強熱心な方が多いです。
自身の業務に活かせるよう資格取得に挑戦したり、新しいことにチャレンジしてみたりと、自らの想いで研鑽を積んでいます。
このような環境で、各自が興味があることについてとことん向き合い、学習を続けることができるのは大学という環境を職場に持つ大学職員ならではです。
仕事のためにという理由もありますが、大学職員である前にひとりの社会人として魅力的な人物を目指しましょう。
まとめ
大学職員が学生と関わるうえで意識していることを紹介しました。
具体的には次の3点です。
- 学生間の不平等が生じないよう対応をする
- 学生の様子を細かく確認する
- 個人情報の保護を徹底する
ついつい、目の前の困っている学生を助けてあげたくなりますが、教務課の窓口にくることができなかった学生の「声なき声」についても、しっかりと考えて対応しましょう。
ダメな大学職員についても3つの例を用いて紹介しました。
- 決定権が自分だけにあると勘違いしている
- 「できない」の一点張りで説明がない
- 何でもかんでもOKしてしまう
この記事を読んでいる転職希望者の方は、これらの例を反面教師にして自身の理想の大学職員像を描いてみてください。
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